『コープスブライド』 在りし日の"デッド"コピー

19/1/14の収穫。

 

『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』は非常に根強い人気を誇る名作である。

独特な世界観と優れた楽曲、純真イケメン(?)のジャックが人気の理由。

しかし、しばしば忘れられがちな要素が一つある……あれはジャックとサリーのラブストーリーなのだ。

 

ティム・バートンもそのことを不満に思ったのかもしれない。

コープスブライド』はまさしく、ラブストーリー要素を強めて『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』を作り直したような作品だ。

その結果どうなったかというと……すごくつまらなくなった。

 

第一の理由として、『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』で魅力的だった世界観が潰されてしまっていることがある。

順に見ていこう。

 

魅力的な世界観は3つの理由で失われている。

1つは構成の問題。

『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』がハロウィンタウンからスタートするのに対し、本作は現世からスタートする。

現世の人々はフランスアニメーション風に大きくデフォルメされており、我々は「このレベルのデフォルメはまだ記号扱いなんだな」「この世界では普通の姿なんだな」と認識する。

早い話、ツッコミレベルが上がるのである。

ツッコミレベルが上がってから死後のトンデモ人間が出てきても、インパクトが薄いのだ。

肉が残ってるやつらとか正直青塗りの人間にしか見えない。

 

2つ目はキャラクターバリエーションの少なさ。

死後のキャラクターの半分は前述の青塗り人間であり、3割は骸骨である。おばけやハロウィン関係なら何でもありだった『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』と違い、今作の異世界人は全て「死人」である。犬もいるけど。

大げさな前振りで出てきた長老がただの骸骨亜種だった時には思わず真顔になった。

 

3つ目は既視感である。

本作のキャラは正直『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』で見た感が強い。

まずヒロインのコープスブライドが厚化粧したサリーにしか見えない。それはしょうがないにしても、骨犬(名前忘れた)はどうみてもゼロだし、縦に裂ける人は市長の亜種だし……

 

コピー前の魅力がダメなら新要素はどうか。

つまりラブストーリーとしてはどうなのか……というと、これもまたイマイチである。

各キャラクターの行動原理がわかりにくいのだ。

 

もっともわかりにくいのが主人公のヴィクター。

ヴィクトリアに最初から惹かれているのならなぜ誓約をミスするのか。

夜1人になった途端なぜ大仰に動くようになるのか。

自由に憧れているのかいないのか。

『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』の純真なジャックとは大違い。

ハムレット型と言えなくもないが、あくまで主導権を握り続けているハムレットと比べ、ヴィクターはただただ振り回されているだけに見える。

雰囲気に流されてヴィクトリアに惹かれ、死後の世界に拉致されて元の家に帰ろうとし、ストーリーの都合でチャンバラする羽目になる。

主体的な意思があるように見えないのだ。

 

敵役のバーキスにしても何の因果で貧乏貴族に目をつけたのかわからない。下調べくらいしようよ。失敗だとわかったらとっとと町から出ようよ。最終盤、突然ワインを飲もうとするのについても御都合主義にしか見えなかった。

 

男連中に対してわかりやすすぎるのがヒロイン2人。

ただひたすらに愛に憧れる女たち。

こちらはいささかわかりやすすぎる嫌いがある。

 

唯一良かった点として楽曲がある。

特に"remains of the day"は割とお気に入り。

字幕の翻訳はいただけなかったが、それだけが唯一の評価点だった。